【インタビュー】日本列島型のテーブルは、「地域」への気づきを与えてくれる暗黙のツールだった
日本列島型の巨大なテーブルがアイコンとなり、話題を集めている、シェアオフィス「HAPON新宿」。その空間は、「オシャレ」や「奇抜」といった言葉では片付けられない一種独特の「カルチャー」を感じさせます。この新宿の新名所はどういう人たちによって、どのようにに作られたのか?そして現在、どのように利用されているのかについて、詳しいお話を共同創業者の永森さんにインタビューしてきました。
HAPON新宿 永森さん。とってもクレバーで優しい方です!
ーー日本列島があるシェアオフィスを作られた永森さんは、どちらのご出身なんですか?
永森さん:「僕は東京なんです。つまんないんですよね、話が広がらない(笑)」
ーー東京出身だからこそ、全都道府県制覇したい!という気持ちになられたかもしれないですね(笑)そしたら、もし移住するとしたらどちらの地方がいいですか?
永森さん:「もうしてるんですよ。といっても、千葉の南房総なんですけど。近い割にかなり田舎なんで。僕は先ほども言ったように元々東京なんですけど、実家が数年前に木更津に引っ越して、それで房総半島に行くようになって、いいなと思うようになったんですよね」
ーー交通の便もいいですよね
永森さん:「木更津とかだと、品川駅まで30分くらいなんですよ。都内の別の場所に住んでいるより交通の便はいいですよね。なので千葉はけっこう面白いですよ。食べ物もおいしいし、アクアラインがいいんですよね。潜って上がる感じが、水泳のバサロスタートっぽくて。古いですけど(笑)通勤行き帰り、気分転換になりますよね」
ーーところで「HAPON新宿」のコンセプトとは一体なんでしょう?…何を最初に発想して作ったのですか?
永森さん:「タイミング的にいうと、震災前にシェアオフィスの企画をしていて、
「僕らはシンプルに、まず内装をどうしようかということを考えました。オフィスだったら絶対テーブルが必要じゃないですか。じゃあそれを日本列島型にしよう、と。で、立ち上げ4人のメンバーの中に、彫刻家がいたんですよ。で、こういうの作れる?という話になって」
永森さんオススメのリアス式海岸のでこぼこ。みんなに触られた跡が一目でわかります(笑)
「そしてその次に、シェアオフィスの名前をどうしようかという話になって、いくつか違う国の言葉でいろいろ挙げてみたんですね。JAPANから始まって、JAPONとか。そしたら、スペイン語かな。JAPONと書いてハポンと読むんですよね。ちょっとゆるくてちょっと抜けたかんじで、破裂するような響きも、語感がいいねという話になって、っていうのでだいたい出そろったんですよね」
「つまりは、シェアオフィス、震災、机、名前、という順番ですね」
ーーお客様にもこのコンセプトは伝わりやすいですよね
永森さん:「確かに、こういうものがあるとアイコンになりますしね。そしてけっこう使いづらいのかなと思ったんですが、意外に面白くて、そんなに不都合がないんですよ。むしろ凹凸とかが面白かったりして、たまに机の縁を触りながら仕事している方もいますよ(笑)
僕のオススメは、岩手のリアス式海岸のところです。あのゴツゴツ感はぜひ触っていってほしいですね。気持ちいいですよ」
「あと、『四国』は一人ではまるんですよ。あと関東は、房総半島と伊豆半島にちょうどひじを置ける、みたいな。楽しいですよね」
ーーバーチャル旅行もできますよね、今日はあの県に座ろう、とか
永森さん:「そうそう、けっこう人間ってフィジカルな存在で、逆にそういうところから興味が立ち上がってきたりしますよね。僕自身も、旅行は好きな方ではありましたけど、当然行ったことのない地域がたくさんあったんですね。で、これをやり始めて、去年けっこう旅行しまして、結果的に47都道府県を今までに全て廻ったんですよね。でもなんでそういう気持ちになってかというと、やはり普段この日本列島型のテーブルを見ていて、身近に考え感じていたからでしょうかね」
「九州のテーブルを見ていても、僕はおととしまで鹿児島しか行ったことがなかったんですが、去年一通り全部廻ったんですよ。そうしたら九州テーブルの場所の位置関係とか言えるようになるんですよね。ココ行ったな、とか」
ーーそういったかんじで、旅心をあおる仕掛けになっている、というのも面白いですね
永森さん:「そうですね。『形』とか、さっきの『音の響き』とかを大事にしていますね。そういう無意識から入っていく情報っていいんじゃないかな、と。日常的なところでは割と理詰めで論理的に仕事していたりしていても、実はもっとそういうような、形とか音も無意識にガッと入ってくるとか、そういうのってありますよね」
ーーテーブルを見たお客様の反応はいかがですか?はじめて見たときや、はじめて訪れた方の反応というものは
永森さん:「最初はネットやSNSを見て、なんだこれはと思って気にはなっていた状態で、その後来た方は『テレビで見てたアレを見れた!』みたいな感じに見受けられますね。意外に大きいね、とか、あと逆に、まったく気づかない人もいます。これが日本列島型のテーブルだということを。それって逆に、これをどう捉えるかで、その人自身がどういう人でどういう状態かというのがでてくるのかな、と。そういう面白さもありますね」
「一番面白かったのはオープニングパーティーのとき、ふだんイベントのときは日本列島をくっつけるんですね。その時に、全国各地の地酒を置いて、飲み歩きみたいなかんじのことをしたんです。使い方としてはそういうのはいいなと思っていて、地域イベントなんかをする時にも、どこかの地域にフューチャーしたイベントをやるときもありますね」
ーー最近もイベントの開催は多いですか?
永森さん:「最近日本列島型のテーブルの知名度も上がったみたいで、地域イベントや地方イベントをやりたいっていうオファーは多いです。場所で言うと、飛騨、徳島、島根、高知、奈良の東吉野村とか。あとは移住イベントですね。博多移住イベントだったり、京都移住計画みたいなかんじですね。そういう地域イベントでけっこう使ってもらっていますね。
ーーメッセージを発信しやすいですよね
永森さん:「そうですね。ここだと」
ーーちなみにテーブルのお値段はどれくらいなんでしょう?
永森さん:「テーブルは彫刻家が作ったんですね。だから一点ものです。プロジェクターで日本地図を照射して、それで線を引いて、という。でも確かにそのあとに、島根県の人が島根県テーブルを作ってほしいというオーダーがあって、作りましたよ。値段は板の材質によりますね」
ーーイベントについて掘り下げてお伺いしたいんですけれども、どういったイベントがいままでありましたか?
永森さん:「やはり地域イベントが多いですね。地域イベントでも、移住促進イベントみたいな。自治体とか各種団体であったり、あとは地域の活動紹介とかは、定期的に『使いたい』という申し出をいただいていますね」
「その時に、カフェエリアがあるので、地域の食べ物とか飲み物を出して、トークショーをやったり、日本列島を囲んで集う、みたいな。ちょっと弓なりになって」
ーーきれいに机をくっつけるのは意外と大変ですか?
永森さん:「大変です(笑) 日本列島大変です。思っている以上に日本列島はえびぞりなんですよ。最初の東北の位置が重要で、北海道を置いた次に、東北をどう置くかで、その下が全然違ってきちゃうんです。やりすぎたり、たりなかったりとか」
ーー印象に残っているイベントは何かありますか
永森さん:「『蟹を食べる』というイベントがありましたね。鳥取の蟹をたべよう!みたいな感じで、その時は日本列島のテーブルをばらして、テーブルごとに蟹をさばいてそこで食べる、という。けっこうアガりましたね。地酒なんかも飲みながら」
「他には音楽イベントもやっています。アコースティック限定でBGMを流すようなかんじで本を読んだり、作業をしながらでも聞ける、といったような。また、たまに『土曜の朝の音楽会』と言うイベントもやっています。入居されている会員さんがNPOをやられていて、子供に音楽を親しんでもらうというコンセプトで、土曜の朝家族で来れるという場を設けています。チェロを演奏したりもするんですよ」
小上がりの壁にペイントされている「HAPON富士」。クールです。
ーーイベントスペースとしてこのように活用してほしい、という提案などあれば教えてください
永森さん:「せっかく日本列島があるので、日本列島の地酒ツアーじゃないですけど、テーブルを使ったイベントがいろいろできるのではないかと思っていて、活用していただけるとありがたいです」
「あと施設内は、木やオーガニックのものなど自然のものを多く使っているので、それを感じられるようなイベントというのもオススメです。
いろいろあるイベントスペースの中でも、新宿駅から5、6分という都会の真ん中という立地にこういった空間があるギャップも楽しんでいただきたいですね」
ーー最後にメッセージがあれば、お願いします
永森さん:「撮影などにもお使いいただけますので、ぜひオススメしたいです。貸切でも一部でも。本棚があったり、白い壁も雰囲気があるので、ぜひ使っていただければと」
「それから最寄の新宿駅はターミナル駅ですから、誰にとってもアクセスがいいので、ターミナル駅に近い場所にあるイベントスペースとして、ご活用いただけるとうれしいです」
ーーもうひとつ最後に、いままで来たお客様で、何県とか何地方の方が多かったですか?
永森さん:「感覚的には、北海道が意外と多かったかもしれないですね。北海道は日本の中では新しくできた土地じゃないですか。そういうところでも、こういったコワーキングとか新しいことに相性がいいんでしょうかね。そう言う土地柄かもしれませんね」
永森さん、ありがとうございました!
(インタビュー・文:Eventistaライター:スドウ)
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